ライターの陽菜ひよ子さんが
弊社が取り組む「犬山のかいこ〜んプロジェクト」に参加してくださり、
中日メディアビジネス局で記事にしてくださりました。
かわいいイラストと一緒に、
なぜ弊社がプロジェクトを立ち上げることに至ったのか?
その経緯や会社の歴史をまとめてくださっています。
ぜひご覧ください。
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中日メディアビジネス局 記事のリンクはこちらから⇩
https://adv.chunichi.co.jp/adfile/nagoya_love25/
第25回
「養蚕の復活」を目指す大醐の「愛知シルク革命・犬山かいこ~んプロジェクト」

愛知県は古くから織物の産地。有名なのは毛織物(尾州毛織)や木綿(知多木綿)です。かつては絹織物「八丈絹」の産地でもありました。
「八丈絹」とは現在一般的には八丈島特産の絹織物のこと。しかし古来より同様に呼ばれる、一匹(絹布2反)の長さが八丈(約24メートル)の絹織物が各地で作られており、尾張国(愛知県)と美濃国(岐阜県)の特産品でした。鎌倉時代成立の物語集『宇治拾遺物語』にも、この八丈絹について記述があります。
失われた養蚕と絹織物づくりを愛知県に復活させようと活動しているのが、名古屋市北区にあるシルク製品製造の株式会社大醐の社長・後藤裕一さんです。

株式会社大醐の社長・後藤裕一さん
苦労した先にたどり着いた「本物のオリジナル」
日本のモノづくりを守りたい
大醐は後藤さんの父・後藤昌治さんがはじめたレディスアパレルが前身。1980年の創業当初は順調だったものの、バブルがはじけ、アパレルは衰退していきます。
苦しい中でもアイデアマンの後藤さんは、おしゃれなボクサーパンツや伸縮性のある綿素材のステテコなど斬新なアイデアで売り上げを伸ばしました。しかし、どんなに目新しくて人気に火がついても、すぐに模倣品が出て売れなくなる、の繰り返し。
後藤さんは「生地を購入してデザインするだけだと、『オリジナル』として弱い」と気づきます。「だったら生地、いや原料から作れば『本物のオリジナル』になるのでは」と考えました。
同時に後藤さんは、最初のキーワードでもある「日本のモノづくりを守りたい」と考えました。そこで目をつけたのがシルク製品です。
「カッコ悪いもの」を「かっこよく」
肌にやさしく保温性の高いシルクの効能はまだまだ周知されておらず、愛好家のほとんどは、アトピー患者や冷え性の人たちでした。
従来のオーガニック製品は、高品質であるほどデザイン的にはシンプル。ぶっちゃけていえばかわいくありませんでした。「これをもっとかわいくしたら、普通の人も手に取ってくれるのではないか」そう考えて、靴下もパッケージもかわいくデザインしました。

渾身のシルク製品は、「絹屋」ブランドで東急ハンズなどの雑貨店で取り扱われた結果、大ヒット。手ごたえを得た後藤さんは、その後の大醐のテーマを2つ目のキーワード「カッコ悪いものをカッコよく」に決めました。
昨今ではSDGsの影響もあり、体にいいものや環境にやさしいものを求める消費者の嗜好は高まっています。「でもできれば、おしゃれなものが欲しい…」そういった潜在的な需要はかなり高そうです。
筆者自身も夫がアトピーのため、肌に触れるものは自然素材のものにこだわっていることもあり、このあたりのお話は、非常に共感しました。(筆者夫婦のアトピー闘病生活については、『アトピーの夫と暮らしています』(PHP研究所)にくわしいです)
犬山かいこ~んプロジェクトのミラクル
生え放題の雑草の下から現れたのは・・・
順調な滑り出しを見せたシルク製品にとって逆風となったのは、折からの円安です。値上がりだけでなく入手自体が困難となり、後藤さんは思い切って「シルクを一から作ろう。カイコのエサとなる桑畑を作ろう」と2024年、犬山市に土地を借りました。
元ブドウ畑の2,300坪の土地は、ブドウは切り倒されていましたが、雑草が生え放題。ここを一面の桑畑にする「犬山かいこ~んプロジェクト」のスタートです。かいこ~んは、カイコと開墾を掛け合わせたもの。
後藤さんと社員で手分けして雑草を抜き、キレイになった土地を見て驚きました。雑草の中に生えていた木が、「桑」だったのです。

桑の木を植えようと思っていた土地の7割に、すでに天然の桑の木が自生していた…なんというミラクル!桑には野生のカイコ「クワコ」もいました。わたしたちのよく知るカイコは真っ白ですが、クワコは茶色をしているそうです。
植樹会で桑の木のオーナーに
土地は「つどって犬山」と名づけ、さまざまなイベントスペースとして活用することにしました。その一つ、3月の植樹会「春の野良しごと」のイベントに行ってきました。2,300坪の広大な土地なので、まだまだ桑を植えるスペースはたっぷりあるとのこと。
「つどって犬山」の場所は、ナゴヤ圏の人にはおなじみ、名鉄グループの運営する「リトルワールド」(犬山市)のすぐお隣。愛知県と岐阜県の県境にあるため、最寄り駅は岐阜県可児市下切にあるJR太多線下切駅。車で拾っていただき、10分ほどで現地に到着。


前日まで雨が続いていたのがウソのように、当日は快晴!後藤さん「こういうイベントで雨が降ったことってないねぇ」とのこと。太陽のような社長のもとには、人が寄ってくるのでしょうか。この日も30名ほどの人が集まりました。
かいこ~んってやっぱりたいへ~ん!
おいしい食べ物につられてやる気を出す
受付で参加費500円支払って奥に進むと、玉ねぎを炒めるよい匂い。お昼ごはんのシチューのほかに、おにぎりやデザートの大福なども用意されていると聞き、がぜん頑張る気力がみなぎってきました。

最初に3つのチームに分かれ、チーム1は植樹から、チーム2は草抜きから、チーム3は枝の伐採からスタート。
筆者はチーム2で最初は草抜き。抜いた雑草は敷き藁の代わりに地面に敷くと、ミネラル分が土に吸収されるのだそうです。
草が気持ちよく抜けるのが意外と楽しくて、チームの方々とおしゃべりしながら和気あいあい。これなら楽勝かと思いきや、そんなに甘くはなかったのです。
意外とハードな植樹
植樹はまず穴掘りから。地面が固い!穴を掘るだけで大変。やっと掘れても大きな石が邪魔をして、なかなか掘り進められません。やっと穴が掘れたら木を植えて水を注いで終了!あとは端材でネームプレートを作って根元に置いたら完成です。


「みんなで一緒に楽しむ」がモットー
植樹のあとは食事タイム。大きなおにぎりとシチューでお腹がふくれて…腹ごなしに散策ツアーに参加。
小牧のはちみつハピネスビーの社長・大野さんが「里山散策ツアー」を開催してくださり、山を歩いて自生する木や花の種類を教わりました。

庭師でもある大野さんは、このあとチェーンソーを手に慣れた手つきで伐採してくださった
ハピネスビーでは、愛知県小牧市産の非加熱はちみつを作っています。この犬山の開墾地にも5月にはハチの巣箱を設置する予定とのこと。
「大醐とハピネスビーさんと一緒にここで養蜂をするんです」と後藤さん。大野さんが「いやここは大醐さんの場所だから、大醐さんだけの名前でいいですよ」と遠慮するも「一緒にやろうよ。その方が楽しいでしょ」
そんな会話を聞いていて、後藤さんのもとにたくさんの人が集まる理由がわかった気がしました。後藤さん、ここで子どもや高齢者の「居場所づくり」をしたいと考えているのだそう。「みんなで一緒に楽しむ」が3つ目のキーワードなのですね。
「この場所でみんなで楽しめるアイデアがあったら教えてね。どんどんここを使ってくれていいからね。イベントなどもやってくれていいよ」と参加者にも声をかけていました。
草抜き、植樹、最後に待っていた伐採
散策後、周りの人に取材がてら話を聞いていると次の作業に呼ばれました。最後の最後に待っていたのが枝の伐採です。

使い慣れない高枝切りばさみで挟むように枝を切っていきます。これが、見た目は簡単そうなのに意外とコツが必要。終わるころにはヘトヘトになりました。
待望のおやつタイム!大福と大きなマシュマロやシイタケをみんなで焼いていただきました。生き返るってホントこういうこと!

犬山の地を楽しみ尽くすプロジェクト
この日は約50本の桑の苗を植樹しました。
カイコのために無農薬で育てている桑には、カイコのエサとなる以外にも活用方法があるといいます。葉は薬用茶、初夏になる実はベリーの仲間で甘く、ジャムなども作りたいと考えているそうです。
人気上昇中のコットンパールをシルクで作ったシルクパールや、肌から吸収できるビタミン成分を含んだシルクなど、アイデアマンの後藤さんの口からは次から次へとアイデアがあふれ出てきます。
ここまで見て来た後藤さんのキーワードは3つ。
① 日本のモノづくりを守りたい
② 「カッコ悪いもの」を「カッコよく」
③ みんなで一緒に楽しむ
東京から大手出版社の社長が視察に訪れたりもしているという「犬山かいこ~んプロジェクト」。犬山の桑畑から大きな夢が広がっていきます。

(文・イラスト)陽菜ひよ